クマノザクラを知る

発表の経緯
 クマノザクラは、紀伊半島南部にもともと自生していたサクラの種です。その存在は知られていましたが、西日本に広く分布するヤマザクラの変異と考えられていたようです。森林総合研究所の勝木博士らによって、形態的特徴や分布状態などが研究された結果、未報告の種であることが明らかになりました。
​ 和名と学名(Cerasus kumanoensis)が2018年に正式に発表され、広く知られるようになったのです。

クマノザクラの学名の基準となるホロタイプ標本

種と栽培品種

 野生の植物を分類する基本の単位が種(species)です。種を単位にすると、日本に自生するサクラはヤマザクラやエドヒガンなど10種しかありません。クマノザクラもこの10種のひとつなので、きわめて大きな発見だったのです。一方、‘染井吉野’や‘河津桜’などの栽培品種(cultivar)とは、野生の種をもとに、人が区別をして名付けた種類です。人が価値を判断して育てるので、時代や地域によって生まれ消える存在です。

クマノザクラの花

花と葉の特徴

 典型的なクマノザクラの花は、ひとつの花芽に2個の花がつき、花柄が比較的短く無毛です。花弁は白~淡紅色で、先端が濃くなることもあります。葉は、葉身が卵形で幅が18~36㎜と細長く、葉縁の鋸歯が粗く、葉面裏が淡緑色です。これらを含む多くの特徴を観察することによって、クマノザクラの正確な同定ができます。ただ、種内の変異や雑種の判断は難しいので、迷ったら専門家に見てもらいましょう。

葉

分布

 クマノザクラは、紀伊半島南部の奈良・三重・和歌山の3県にまたがる南北90㎞、東西70㎞の範囲に分布しています。分布域の中でも、標高200~800mの山地に多く見られます。より標高が高い場所や潮風が強くあたるような沿岸部には見られません。若木は明るい林縁や藪などを好むと考えられ、以前は薪や炭のために伐採していた広葉樹の若い自然林が、クマノザクラを探すための最適な観察ポイントです

道沿いの藪に若いクマノザクラはしばしば見られる